恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
濃いめのコーヒーを飲み、帰る事にした。

当たり前のようにリュウは、カードで支払いをしてしまう。

えーと、
今日はすごくお金を使わせちゃったな…


「リュウ、今日はありがとう。
私はあんまりお金はないけど、お礼がしたい。」と言うと、

「さっき言った、金曜日の弁当。時間があるとき作って欲しいな。」と笑う。

東京で本当に食べるんだろうか?

誰かと一緒にいるのなら、お弁当は食べないよね。

いや、と、思い直す。
恋人とは週末に会っているのだと思う。

リュウが週末誰と会おうと関係ない。
私たちはお友達だ。と自分に言い聞かせる。

あれこれ思う自分の気持ちがよく分からなくなってしまう。

リュウは強引だけど、優しくて、私の瞳を真っ直ぐに見る。

並んでつり革に掴まった電車の中は、冷房が強めに効いていて、
フレンチスリーブのワンピースだけでは少し肌寒い。
腕をそっとさすると、
「ナナコ、寒い?」とリュウはスーツのジャケットを私に着せかける。
私は
「ありがとう」と言って、リュウを見上げると、
リュウが私の顔を覗き込むのとタイミングがあって、
唇が触れるくらいに顔が近い。

私は慌てて、顔を背ける。

リュウはクスクス笑って、
「そんなに、嫌がらなくってもいいんじゃないの?」と言った。

顔が熱い。
私はなんでこんなに慌てちゃううんだろうと電車に揺られながら考える。

なんだか、困ったな、
リュウと一緒だと、私は凄く楽しくて、ドキドキさせられてしまう。

この感情は知っている、

でも、リュウには恋人がいるのだ。

肩にかけられた上着はリュウの匂いがした。
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