恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「桜子さん、今、妊娠何ヶ月なの」と私が聞くと、
「2ヶ月。順調に行けば、来年の春に産まれるはず。」と嬉しそうだ。
「院長、反対しなかったのか?」とリュウが聞くと、山岸さんが、
「孫できちゃったからね。
最初は驚いてたけど、病院の経営面をこれから勉強して欲しいっていわれた。
…頑張ります。」と、桜子さんに笑いかける。優しい笑顔だ。

「頑張ってもらわないと、俺たち路頭に迷うんだろ。
頑張れ、次期経営者。」とリュウが笑いだし、

「リュウが問題起こさなけば、いいんじゃないのか?」
と山岸さんは言い返して、フンと鼻をならした。

楽しい夜は過ぎていく。



2人が仲良く手を繋ぎ帰っていった後でリュウがコーヒーを淹れながら

「あの2人、何年もお互いに好きだったのに、見てるだけだったんだな 」と不思議そうだ。
そして、
「ナナコはいつ、俺の事好きになった?」と聞く。

…そんな事は聞かないで欲しい。
けど、リュウは私の答えを待つ。

「…10年振りに会った日、リュウは私をハグしたでしょ。
その時、懐かしい匂いがした。
覚えていたリュウの匂いだって思ったの。
昔もこんな風にぎゅっとハグされた。って思い出だして、…リュウの事考えるようになってた。」

リュウは
「へー。そんなに前だったの?早く言ってくれれば、付き合うまでに、こんなに時間かからなかったかなあ?
俺はさ、昔ナナコを抱きしめた時。…かな。
まあ、ここに来る前、他の女と付き合ったりしたけど、
なんだかどの子も大学病院に勤める、将来出世しそうな俺を望んでて、
出世コースから外れたり、
病院やめて、ボランティアに行くって知ったら、離れて行ったし、
ずっとナナコの笑顔が俺の中に居て、どの子も追いかけるほど好きになれなかったかな…
そっか、なーんだ、俺がナナコを忘れなかった時間って、
壮一郎が待った時間より長かったのかも…」と笑った。

私が恥ずかしくなって、俯くと、
「そんな、顔を見たら、キスしたくなるだろ」と言って、熱のこもった長いキスをして、
「早く、俺のものになって」と耳元で囁いた。
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