恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
尾崎竜也の幸福。
朝の光で目が醒める。

寝室のカーテンは昼に寝るときだけ閉じられ、
夜眠る時は閉じない習慣が出来ている。
朝の光で目覚めるのは気持ちが良いという単純な理由だ。

ナナコは俺の腕の中にいる。
深く眠っている様子で、動く気配はない。
長い睫毛に縁取られた瞼にそっと唇をつけるが、
穏やか寝息をたてたままだ。

俺は深い安堵と幸福感に包まれて、
ナナコの身体を抱き寄せ、首筋の匂いを深く吸い込む。
ナナコが香水を付けるのは休みの日の出かける時だけだ。
以前は休みの日の朝のシャワーの後も付けていたけれど、
何も付けないナナコの匂いが好き。と言ったら、
そんな事を言うのはリュウだけでしょう。といいながらも、
出かけない休みの日は香水を着けなくなった。


10年前に非常階段で、すごく好きな匂いだって思いながら、
ナナコをぎゅっと抱きしめた事を思い出す。
そういえば、ナナコも昔の俺の匂いを憶えていたって、そう言った。

動物はお互いの匂いでイロイロ確認し合うものらしいって、聞いた事があるから、
ナナコと俺もお互いの匂いで何かを確認し合って今に至るのかもしれないなと、
ナナコの寝顔を眺めながら考える。
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