恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
俺は、風呂上りのナナコの遠慮のない短パン姿や、濡れた髪に我慢できない時は
夜中に彷徨って、飲みにでかけたり
(駅前のホテルの最上階にあるBARにはたいてい壮一郎がいた。 )
不意に覗き込んでくる、茶色い瞳に翻弄され続ける自分の気持ちをなだめたりと忙しくて、
ナナコが俺に他にオンナがいるんじゃないかと思っていたなんて、
ちっとも思いも寄らなかった。


キスを拒まれた時は、俺は何をどこで間違ったのかと途方に暮れた。
少しずつ近づき、スキンシップも拒まれなくなったと、
安心し始めたところだった。
ナナコと一緒にいると楽しいと伝えたり、
ナナコがここにいるから、この町に住むと言ったりして、
いやな顔をされなかったとほっとしていたにもかかわらず、
ナナコの涙を拭う事さえ、出来なかった。


まあ、思い切り、誤解だったので自分の誤解を生んだ言動や、
首に付けていた指輪については、仕方がなかった事として片ずけておこう。

ただ、臆病なナナコが相手だったので、ものすごく遠回りしたみたいにも思う。

早く俺の気持ちを確かめてくれていたなら、ともおもったが、
ナナコが相手なので仕方がなかったと言える。

反省はこれでおしまいにしておこう。


ナナコに好きだって伝えられてから、俺は有頂天だ。

ナナコの1番になる事が出来たのだから。
いくらでも愛していいのだから。

そして、ナナコも遠慮がちに、それでも心を込めて愛を伝えてくれる。

俺は幸せだ。

ナナコにもこの幸せを分けてあげたい。そう思いながら眠くなる。

もう一度隣で眠るナナコを抱きしめ、

愛してると囁いて、俺は深い眠りについた。
< 259 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop