恋人未満のルームメイト(大きな河の流れるまちで。リメイク版)
「もう、ここに住むって決めてるじゃん。」と、私が呆れると、
リュウは嬉しそうにうなずく。


「一緒に住んでいるのが周りに知れたら、どうするの?」
「俺が押しかけたってちゃんと言う。」

そうじゃなくて、

「恋人だって思われたら?」
「ナナコ、好きな男がいるの?」

私じゃなくて、あなたが困るんじゃ、ないんですか?

「今はいないけど、」
「10月に俺は出て行くから、それから、他のオトコと付き合えばいいじゃん」

「リュウは?」

「この前も言ったけど、ナナコは自分の事だけ考てほしい。
ナナコ、コーヒー飲む?」


「…飲む」と私は答える。

リュウは自分の家にいるように、お湯を沸かし始めた。

もう、ここに住む事は、リュウの中では決定事項で、
私には、どうにも出来ないのだとだんだんと理解してきた。

リュウの人並み外れた行動力は私の想像を遥かに超える。

コーヒーのいい香りが私の心を落ち着かせる。

やれやれ。

「…ルールを決めるから、ちゃんと守って…」と手を洗うために洗面所に向う。
リュウはガッツポーズをして、後ろを向いた私に抱きついた。

「こら!まずは抱きつくの禁止!!」私の顔が赤くなる。

「ありがとう。ナナコ」

ともう一度ギュッとハグしてリュウはコーヒーの続きを淹れにキッチンに戻った。

ああ、もう!

また、リュウの思い通りだ。
今まで悩んでいたのが無駄になったな
と、私は急に可笑しくなって手を洗いながら声を出さずに笑った。
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