あの日失った想い
「いっ…郁麻!?」



私が見た人影は、暗闇の中でも目立つぐらい容姿端麗の男の子、郁麻だった。




絶対に会うはずのない彼を目にして驚いた。





いつもポーカーフェイスの彼自身も少しだけ目を見開いていた。




「こんな時間に何してるの?1人なの?」




「それはこっちのセリフ」




さっきまで驚いていた彼はいつの間にか無表情に戻っていた。





その上、私が質問したことをそのまま返してきた。




「私はね、仁美と映画行ったりして遅くなったの。てか、先に質問したの私なんだけどー」




私は少しプーっと頬を膨らました。だけど、彼は私のこの空しい行動にも動じなかった。




「バスケしてた」




言い切った。ものすごく無表情に言い切った。



…ていうか見たら分かる話だった。郁麻はバスケットボールを持っていた。



あぁ、私のドジ……

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