王様と黒猫
城の謁見の間は静か過ぎて苦手だ。

ここが会議室や私室なら、部屋の外の雑踏が多少入り込んできて空気を柔らかいものにしてくれる。しかし謁見の間は、窓の外に植えられた木々で外部からの音を全て遮断してしまう。

冷たい葉擦れの音の中で一人玉座に座っていると、時々自分が酷く孤独に感じる。





「………いか……アレックス陛下!」


玉座でぼんやりしていた自分の耳に突然飛び込んできたのは、困り果てたように俺を呼ぶ声。何処を見るとはなしにぼんやりと宙をさまよっていた視界に映ったのは、眉毛を八の字に歪めたフィリップの顔だった。

フィリップは俺の側近の一人だ。爺さんばかりの周囲で、ジェイクとこのフィリップだけが俺の心を緩ませてくれる。

まだ若いが、有能な男だった。


フィリップは大げさに溜め息を吐くと、あきれたように言葉を続けた。


「陛下……話の途中で放置しないでください」

「あ、ああ? すまなかった」

「いえ、では報告を続けます」

「ちょ、ちょっと待て! フィリップ…………あー、何の話をしていた?」


そう返すと、フィリップはますます眉を歪め、深い溜め息と共にうなだれてしまった。しかしすぐに気を取り直すと、今度は先程とは違う少し強い口調で話の筋を説明し始めた。

こいつのこんな世話焼きでジェイクとは違うやさしい几帳面さは、その人柄をよく表している。


「――――で、陛下の御心配されている『ネルソン公爵家』には、貴族院でも不穏な動きを見せる者は今の所見つかりません」

「そうか」

「まあ、もともとネルソン公爵家は院内でも力のない小さな家です。情報もなかなか流れにくいという事もあるのでしょう」




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