身代わりペット
「本当ぉ?でもぉ、三嶋千歳が出しゃばって来たらどうするの?うちら、浮気の現場押さえられてんだよ?」

まさにその三嶋千歳が後ろで話を聞いているなんて、この二人は思っていないだろう。

「いや、写真の類は撮られてなかったし、なんか騒がれたら俺とお前が口裏合わせて三嶋をウソつきに仕立て上げれば上手く行くって。お前、男味方に付けるの得意だろ?ちょっと泣き真似ぐらいしてくれればチョロい」

「ちょっとぉ!それ、ヒドくなーい?まぁ、確かにチョロイけどねー」

腹の立つ喋り方で、でも満更じゃない口調で新井麗子が抗議している。

(あー、気分悪っ……)

アタシは段々頭痛がして来て、更に頭を抱えた。

確かに、あの時は頭に血が上って咄嗟の行動だったから写真の類は一切ない。

でも……。

アタシはテーブルに置いてある携帯をチラッと見る。

「だからお前さ、数日、紗月の動向見張ってろよ。んで、男といる所の写真とか撮ってこい」

「はぁ?なんでワタシが!?」

唐突な提案に、新井麗子が声を上げた。

アタシも声が出そうになったけど、グッと堪える。

「だって、俺じゃ見付かった時になんて言い訳すんだよ?慰謝料ふんだくる為に付け回してました、って言うのか?」

「まぁ確かにそぉだけどぉ……」

「だろ?それだったら面識の無いお前が適任なんだって」

「そぉかなぁ……」

新井麗子はなんとなく納得が行っていない返事をする。

(面識がないって言ったって、新井麗子は社内では有名なんだからどっちにしろ付き纏ってたら不審に思うだろうが!そんな事も分からないのかこのバカ二人は)

しかし、何故か言い包められた新井麗子は、

「分かったわよぉ。ただし、バレても文句言わないでよねぇ?」

と言葉では嫌がっている風に聞こえるが、なんとなく声が弾んでいる。

探偵になった気になってでもいるんだろうか。
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