身代わりペット
「ねえ、ワタシと二人で会っててぇ彼女さん何にも言って来ないのぉ?ほら、彼女の友達の――三嶋千歳、だっけぇ?あの人に浮気してるのバレちゃったじゃなぁい?ヤバくなーい?」

いつもの様に、新井麗子が世の中の女性みんなが嫌いなブリブリ口調で会話をし出す。

「あ~。そう言えば一か月くらい前に別れ話のメッセ来てたな」

「えぇ~?やっぱり三嶋千歳が喋ったんじゃないのぉ?なんか言い出したってワタシ知らないよぉ?」

「だーいじょうぶだって!そんな事する様な根性あいつにはねーよ。つーか俺、アイツから慰謝料取ってやろうかと思ってさ」

「え?どう言うことぉ?」

『慰謝料』と言うクズ男の爆弾発言?に、アタシは持っていたメニュー表を落としそうになった。

(は!?慰謝料??え?こいつ、何言っちゃってんの!?)

「俺、別れ話にOKの返事してないんだよね」

「うん。それがぁ?」

「てことはさ、俺は別れたくないって意思表示になんだよ。あんなに俺にベタ惚れだった紗月が急に別れ話とか、おかしいんだって。ぜってー男が出来たと思うんだよ。その証拠掴んで裏切られたー!って騒いで慰謝料ふんだくってやろうと思っててさ」

アタシの動揺を他所に、二人はアホみたいな会話をどんどん繰り広げて行く。

「浮気してたのはアンタなのに、そんな事出来るのぉ?」

うん。新井麗子の言っている事は正論。

「大丈夫だって!結婚の話とかチラつかせてたし、メールの記録もあるし。コレ、婚約破棄って事でイケるべ?」

そんで、クズ男の言っている事は暴論。

て言うか、紗月は結婚の話が出ているなんて言っていただろうか?

今までにした、紗月との会話を思い出す。

(……あっ!あれか!?)

紗月がコイツと別れる数か月前、確かアタシがコイツの浮気現場を目撃して突撃した頃。

紗月がちょっと嬉しそうに『なんか急に結婚についてどう思ってるかとか聞かれた』って言っていた事を思い出した。

(え?あれってそう言う事だったの?)

でも、文面を見せてもらったけど、おおよそ『婚約した』と言う様な内容ではなかった。

(あれを婚約破棄の証拠って……)

頭を抱えるアタシを他所に、二人はどんどん話を進めて行く。
< 111 / 193 >

この作品をシェア

pagetop