身代わりペット
「あの、中条さん……」

さっきまで疑いの目を私に向けていたギャラリーのみんなが、申し訳なさそうな顔で私の前に立ってる。

「ごめんなさいっ!!」

全員一斉に私に向かって頭を下げた。

「中条さんの話もよく聞かずに疑ってしまって……」

「だから私はおかしい、って言ってたじゃん!」

「うんうん!中条さんはそんな事しないってあたしも言った!!」

「ちょっと!後からそんな事言うのズルくない!?」

「そうだよ!」

「だってあの時はみんな中条さんを疑っていたじゃん!」

「それにしたってさぁ!」

ギャアギャア騒いでいるみんなの剣幕が凄くて私がポカーンとしていると、間に千歳が入って「ストーップ!!」と両手を広げてみんなを制した。

千歳の声に、みんなが黙る。

「アタシが言うのもなんだけど、この話はもう終わり!あの音声を聞いた通り、みんなも紗月がそんな事する様な人間じゃない、ってちゃんと分ったでしょう?だったらそれでもう良しっ!ね、紗月?」

千歳がそう問いかけて来たので、私は咄嗟にうんうんと頷いた。

「あの状況じゃ誰だって私を疑うよ。私だって私じゃない誰かがああなっていたら疑ってた。だからみんなも気にしないで」

私はシュン…としているみんなにそう言った。

……本当は疑われた事はショックだったしみんなのあの視線が頭にこびり付いているけど、仕方ない事だと思う事にした。

私の言葉で肩の荷が下りたのか、みんながホッとする表情を見せる。

「それにしても、あの高橋って男と新井麗子、最低じゃない!?」

「ホントホント!結局慰謝料目当てだったんでしょう?」

「うーわっ、マジ最悪じゃん!」

「オレたちの麗子ちゃんがそんな事を……」

「男ってホント、バカだよね!新井麗子なんて一番信用出来ないっつーの!」

「麗子ちゃんを悪く言うなっ!」

「はあっ!?アンタ達、あんな事して来た新井麗子をまだ擁護するワケ!?しんっじらんない!!」

と、私達そっちのけで「女性社員VS男性社員」で火花を散らせ始めた。

「……まあ、あれはほっとこう」

「……うん、そうだね」

全てが解決し、落ち着きを取り戻した私達は、少し呆れ気味に帰りの支度を始めた。

「あの」

「はい?」

呼び止められる声がして、私と千歳が振り向いた。

「あ……」

そこには、何が何だか分からない、と言う顔をした課長が立っていた。
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