身代わりペット
「わ~っ!せめて最初はメイドからにして下さいー!!」



身構えた私の頭上に落ちて来たのは、「……は?」と言う課長の気の抜けた声だった。

「……え?」

頭を押さえていた手をゆっくり下ろし、そーっと課長を見ると、顔を真っ赤にして必死で笑いを堪えていた。

「ごめん、違うんだ。くくっ……勘違い、ははっ」

笑ってる。

課長がお腹を抱え、涙を流しながら笑っている。

こんなに笑っている課長を見たのは久し振りで、なんだか私は少しうるっとしてしまった。


「この部屋。なーんにもなくて殺風景だとは思わないか?」

散々笑った課長は、「は~笑った」と言いながら目元をティッシュで押さえ、私に聞いて来た。

私は頷く。

それを見た課長は、今度は少し寂しそうに微笑んだ。

さっきまで大きな口を開けて笑っていたと言うのに、何がこんなに課長を悲しませているの?

(もしかして、別れた彼女の物がいっぱいあって、それを処分したらこんなになっちゃった、とか?あ、それか別れた彼女が家具を一切合切持って行ってしまった、とか?いやいやはたまた・・・)

色々考えを巡らせていた私は、

「だろ?でも本当はこの部屋、数か月前まで猫グッズで溢れ返っていたんだ」

と言う課長の言葉に、少々面食らってしまった。

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