身代わりペット
「ふ~ん。ペットロスか。今、動物を飼っている人達って多いから結構深刻な問題にもなっているわよね」

コーヒーをすすりながら長い足を組んでいる千歳の姿が妙に様になっていて、これはちょっとじゃなくてかなりシャクに障る。

余談だけど、学生の時から綺麗で目立っていた千歳は、今も会社内で人気だ。

でもずっと付き合っている凄く優しい彼氏がいるのは周知の事実だから、千歳に声をかける社員は誰もいない。

しかしながら「それでも!」と、意気込む猛者達もいるもんで、私はそれを見付けると無駄だ、と言う事を話して釘を刺している。

本当に仲の良い二人だから、邪魔をして欲しくなかったから。

(余計なお世話かもしれないけどね)

「で?紗月は晴れて課長のペットになった、と」

千歳の言葉に、食後のアイスがグッとノドに詰まる。

「ゲホッ!ゲホッ!晴れて、ってなにそれ!?ゲホッ……」

「え?違うの?いいじゃん、ペットになっちゃえば。将来安泰じゃん」

しれっと言っちゃうもんだから、逆に私が呆れてしまった。

「なっちゃえば、って、私には和矢がいるんだよ?それなのに課長のペットになんてなれないよ」

昨日は勢いで了承しちゃったけど、よくよく考えてみれば誤解を招くような行動は取りたくないし、課長には申し訳ないけどもう一度ちゃんと断るつもりでいた。

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