身代わりペット
サワサワサワ―――。

初夏の風が、青々と生い茂っている木々を揺らす。

新緑の香りを連れて通り抜ける風が、とても心地いい。

「もう、別れちゃえば?」

「え?」

なんの前置きもなく、千歳が言った。

「あれから十日もなんの連絡もないんでしょ?そんなのおかしいって」

千歳の言う通り、泥酔して失態を犯してしまってから今日で十日。

和矢からの連絡は、ない。

着信履歴はちゃんと残っているハズだから、あえて私からも連絡はしないでいた。

向こうから掛けて来るかも、と言う期待も込めて。

「でも」

「でもじゃないよ!あんなクズ野郎、別れた方がアンタの為よ!」

急に声を荒げた千歳にビックリした鳥たちが、勢いよく飛び出した。

「……なにか知ってるんだ?」

千歳が「しまった!」と言う顔をしている。

そして唇を噛みしめながら頷いた。

「話して?」

千歳は大分躊躇していたけど、私の顔を見て観念したかの様にポツポツと話し始めた。

それから、和矢が複数の女の人と浮気をしている事。

それを知った千歳に、私との結婚話を持ち出し、口止めしていた事。

全てを話してくれた。

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