身代わりペット
「そっか……」

本当は、薄々気付いていた。

和矢には私以外に女がいるんじゃないか、と言う事を。

それを信じたくなくて、無理やり気付かないフリをしていた。

「ずっと思ってたんだよね。和矢と特に接点がないのに、千歳が和矢を毛嫌いするのはなんでだろう、って。でも、今謎が解けた。そう言う事だったんだね」

「……ごめん」

私よりも千歳の方が辛そうな顔をしている。

「なんで謝るの?千歳はなんにも悪くないよ。私だって、ケンさんがもし裏で浮気しまくってたら嫌いになるだろうし」

「知ってて黙ってた」

「私の為を思ってなんでしょ?」

「それならなおの事、ちゃんと伝えるべきだった」

「千歳は意外と優しいからね。私が傷付くと思ったんでしょ?」

「意外とってなによ」

「そんで私の事が大好き」

「そんなの当たり前じゃない」

「じゃあいいよ」

「紗月……」

私の言葉に、泣きそうな千歳。

和矢の事よりも、親友にこんな心配かけてしまった事に心が痛んだ。

あと、自分の行いを棚に上げて酷いやり方で千歳に口止めをした和矢も許せなかった。
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