特別な君のために

できれば、階段昇降は避けたい。

新入生がこの階段を上ってきてくれたら、もれなく捕まえてしまおう。

そう思って非常口の前に座っていたら。


ツヤツヤのロングヘア、色白の丸顔、目はくっきりとした二重、これはなかなか可愛い女子だ。

ピカピカの制服も見えてきたし、上靴のラインは赤、つまり一年生ってことで。



「君、カラオケ好き? 放課後一緒に歌わない?」

我ながらズルい声のかけ方だと思うけれど、この際何だっていい。

一応部長という立場なので、サボっていると思われるのは避けたい。

とにかくこの子を連れて行きたい、その一心だった。


「えっ?」

そりゃあ、びっくりするよな。でも。

「ま、いいからこっちに来て」

「えええっ!?」

声も可愛らしいソプラノ。合格。


戸惑う彼女の背中を軽く押しながら、講義室のドアを開ける。

ちょうど筋トレが終わったところらしく、早速取り囲まれた。
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