特別な君のために
家に帰って、いつものように鍵を二重に閉めた。

「ただいま~」

一応、リビングの方へ向かって、叫んでみると。

「おね~ちゃん、おかえり~」

一日ぶりで、千春の声が聞こえてくる。

「ただいま、千春。いいこにしてた?」

パタパタと駆け寄ってくる千春の、とびきりの笑顔が見えた。

「おねえちゃん、ごめんね。いいこにするね」

「いいよ。ゆるしてあげるから、こんどは勝手にお姉ちゃんのものを使わないでね」

「うんっ! ゆびきり!」


やっぱり、障がいのあるなしに関わらず、千春は可愛い妹だから。

私もしっかり向き合わなくてはならない時期にきたのだと自覚した。


奏多先輩が教えてくれた「いとおしい」の意味を古語辞典で調べてみたら、漢字が二つあり、ひとつはよく知られている「愛おしい」で、もうひとつが「厭(いと)おしい」だった。

もともと「愛おしい」は、動詞「いと(厭)う」からの派生らしい。つらいな、と思ってうとましく思う、苦痛で心身を悩ますさまを表すところから、自分に対しては、苦しい、つらいの意味で、他者に対しては、気の毒だ、かわいそうだ、いじらしい、さらに、かわいいの意が生じる……とのこと。

私と妹の関係を、よく表している言葉だと思った。
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