特別な君のために
返る
連休が終わり、千春が寄宿舎へ戻って、また静かな日々が戻ってきた。

千春がいないので、二重ロックの必要はなくなったはずなのに、私達家族は暗黙の了解として、二重ロックを続けていた。


……千春が帰ってきた時に、かけ忘れる恐れがあるから。

千春が使っていたリビング横の和室には、色とりどりの折り紙が壁一面に貼られている。

連休中に見た花、景色、お父さん、お母さん、そして私。

さらに、ランちゃんも。


連休最終日、ランちゃんを我が家に呼んで、みんなでケーキを食べた。

千春には、ちゃんと写真を見せながら説明したけれど、どこまで理解しているのかはわからない。

ただ、ランちゃんが恐い相手ではないということは、その表情を見ていたら伝わる。

ランちゃんは、ずっと千春のことを気にしていたと言っていた。

意地悪な子に囲まれて困っていた千春を、助けてあげられなかったこと。

千春が泣き叫んでいた時に、何もできなかったこと。

関わり方がわからず、良かれと思ってしたことが、千春を混乱させてしまったこと。

千春だけ、どこの小学校へ行ったのかわからなかったこと……。

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