その笑顔が見たい
第三章
新しい担当エリア業務を早く自分のペースで動かしたくて忙しい日が続いた。
前任の主任の引き継ぎは全く参考にならず、柳さんと行動していた日々を思い起こし、一から営業し直すつもりでこれまでの取引実績、今後の営業計画などを洗い直していた。

聡と会った日から1ヶ月が経っていたが、聡も忙しい日々を送っているらしくあれからは会っていない。時々、どちらともなく近況報告がてらメールをする。

聡のメールに葉月の話題が必ず入っていた。
俺と連絡を取り合ってると言ったら嬉しそうに元気か、どんな仕事をしてるのかとあれこれ聞いてきたらしい。それを聞いて嬉しいとは思うが、一方ではガッカリする。

俺と直接連絡を取ろうとは思わないのか。

どんなに月日が流れてもあの日の夜、キスをしてきた葉月を思い出すと甘酸っぱい気持ちになる。葉月がどんな気持ちでキスしてきたのか自分の都合の良いように考えては少年のように心が踊るのだった。だから葉月は真っ先に俺と連絡を取ってくるだろうとタカを括ってた。十年間密かに期待してた小さな喜びすら打ち消されてしまう。

はぁ、女々しいな。


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