王様と私のただならぬ関係
 困った、と明日香は思う。

 白いお面をかぶった人が立っている。

 目と口だけがぽっかり開いた、白い粘土で作られたようなお面だ。

 表情がなさすぎて、怖い。

 いきなり、チェーンソーとか持ち出してきそうだが、見た感じ、そんな大きなものを隠し持っているようには見えなかった。

 いっそ、般若の面とか鬼の面の方がまだ表情が読めてよかった、と思っていた。

 この扉一枚隔てた向こうにそれは居る。

 ……怖いよ。

 だが、見た瞬間、二択だな、と思っていた。

 こういうことをやるのは、秀人か、大地だ。

 明日香はそっと扉を開ける。

 お面の男は無言で立っていた。

 そのまま話さない。

 ど、どうしたら、と思っていると、すっと一本の薔薇の花を差し出してきた。

 薄紫のような色だ。

「紫の薔薇?」
と呟くと、

「青だ」
と言う。

 ……しゃべりましたね、今、と思ったが、また、それっきり黙っている。
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