王様と私のただならぬ関係
「人は、格好いいからとか、ぱっと見、素敵な人だから、とかいうだけで、好きになるわけではないんですよ。

 ほら、ええっ? って感じの人に、こんな人がっ? と思うような人が、メロメロだったりとかあるじゃないですか」
と言うと、

「お前は色恋沙汰に詳しいんだな」
と感心したように言われてしまう。

「……すみません。
 なにも詳しくはありません。

 特に付き合ったこともありません」
と白状してしまった。

 如月大地が訳のわからないことを言ってくる以外、浮いた噂のひとつもない。

 ……悲しい話だ。

 だが、なんとなく言った言葉を、秀人は、
「メロメロねえ」
と繰り返している。

 やめてください。
 恥ずかしいから……。

 上質な香りの立ち上る紅茶を運びながら、秀人は、まだ
「メロメロ……」
と呟いていた。

 なにかいけませんかねーっ?

 恋愛に疎い秀人と自分。

 この話、まったく進みそうにないな、と思っていた。




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