王様と私のただならぬ関係
 そのとき、近くの部屋のドアが開いた。

 たまに挨拶するOLさんらしき人と目が合う。

 おはようございます、と挨拶しようとしたのだが、こっちを見て、ぎょっ、とした顔をする。

 そして、
「……おはようございます」
と挨拶すると、

「あっ、お、おはようございます」
と早口に挨拶をして、足早にエレベーターの方へと逃げ去ってしまった。

 エレベーターに乗る直前、ちらりと振り返り、こちらを確認している。

 恐らく、秀人を見て驚いたのだろうが。

 わあ、素敵、という感じではなかったな、と思う。

 だが、まあ、私でも驚くな、と思っていた。

 こんな普通のマンションにいきなり、こんな人間じゃないかのような人が、薔薇の花束なんぞ持って立っていたら。

 もし、これが平日だったとしたら――。

 ……夢?

 もう出勤の準備したのに、夢だとかひどすぎる。

 また起きて、一からやれというのかと思いながら、部屋に取って返してしまいそうだ。
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