王様と私のただならぬ関係
「こういうときは、揺らいでいいんです」
と言うと、秀人の口の端が少し動いた。

 あれ?
 笑った? と凝視してしまう。

 思わず、観察していると、秀人は何故か、
「じっとこっちを見るな」
と言ってくる。

「なんでですか?」
と訊いたが、

「……なんででもだ」
と言ってきただけだった。

「そういえば、葉月さん、最初に会ったとき、窓のところに立ってたじゃないですか。
 ポスターみたいな形の。

 研究室の中、基本、見えないようになってますよね。

 なんであそこだけ窓なんですか?」

 そう問うと、
「ああ、あそこは見学コースなんだ。
 滅多にないが、研究所の中を子どもや仕事関係の人間に公開するときに、中が見られるようになっている。

 あの部屋、誰が使ってもいいんだが。

 みんな、人が見てると緊張すると言って嫌がるから、空《す》いてるんだ」

 俺はなにも気にならない。
 むしろ、空《す》いていていい、と言う。

 はあ……。
 気にならなさそうですよね、と思いながら、秀人の話を聞いていた。





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