漆黒が隠す涙の雫

ううん。


これは紛れもない現実だ。


私はとうとうひとりぼっちになっちゃったんだ……。


途方に暮れるって、こういう事を言うのかもしれない。



お兄ちゃんは、本当にもう戻っては来ないの?


私はこれから、一体どうすればいいの?



「てなわけで、今日から愛華はうちの人質だから」


「「人質!?!?」」


昴くんと修二くんが、同時に驚きの声を上げる。


たった今、これからの事を案じていた私もあまりのタイムリーさに潤くんを凝視してしまった。


そういえば、さっきもそんなような事言ってたけど……。


“人質”って、一体どういう事?



「潤、人質って愛華ちゃんを新との交渉の材料にするって事?」


「まぁ、そんなとこ」


「まぁ、そんなとこって…愛華ちゃんはそれ了承してるの?」


昴さんの視線が不安げに私に流れてきたので、私はもげそうなくらい首を横に振った。


「こ、困るよ!人質ってつまり、翼鷹に囚われるって事だよね?」


「そうだね。なんで?やだ?」


「や、やだ?って…潤くん私の体質知ってるでしょ?」


人質って、監禁とかされたりするアレだよね?


“監禁”……考えただけで、ゾクリと背筋を冷たいものが走る。


それが男達の巣窟と言っても過言ではない、暴走族グループなんかにされるというんだから尚更だ。
< 58 / 85 >

この作品をシェア

pagetop