漆黒が隠す涙の雫
「まぁ、あれだ。愛華のYes、Noは関係ないんだよね」
「え!?」
「ほら。人質って、“人質になってくれませんか?”って言ってなるもんじゃないでしょ」
いかにも最もらしい事を言う潤くんに、開いた口が塞がらない私。
いや、それはそうかもしれないけど……。
でも、それってつまり……。
「私に…断る権利はないって事?」
「そういう事」
困惑する私をよそに、潤くんはTVのリモコンを操作し始めて、私の気持ちなど関係ないといった様子でテーブルに頬杖をついている。
なんて勝手なの……。
てっきり優しい人だとばかり思っていたけど、違ったのかもしれない。
今目の前のこの人は、私の気持ちなんてお構い無しに人質なんかになれと言う。
本当に優しい人なら、私の体質を知っていてそんな事を言うはずがないし、仮にも元親友の妹を人質に捕らえるなんてバカな考えをするはずがない。
「潤くんの目的は何?潤くん前に言ったよね?“新は、もう俺らの仲間でも何でもない”って。潤くんは、鷹牙とやらの復活の為だけにお兄ちゃんが必要なんじゃないの?そして、その為に私を利用しようとしてる」