新宿ゴールデン街に潜む悪魔
プロローグ
「カタカタカタ」

東新宿のマンションで山崎響(やまざきひびき)はインターネットで調べものをする。

「窃盗の手段」

「尾行」

「拉致」

「盗聴」

「警察」

「心理学」

「人の殺し方」など。

検索結果を一気に読み、必要な項目をメモに取る。

繰り返す。

毎日この行為をする。
毎日こういったことを考え、頭の中で反芻する。

ここ5年、初めて新宿ゴールデン街に客として飲みに行った日からずっと犯罪のことを熟考している。

メモ帳は20冊近くになった。

「けっこう溜まったな」

響はメモ帳を見てそう言った。

そして壁に掛かっている異常な数の「つばの大きい帽子」にも目をやる。

49個ある。

「こっちもけっこう溜まったな」

帽子の数。それは彼が漫画喫茶に行った数。

すなわち、大小問わず犯罪に手を染めた数。


「さて、50個目の帽子でも買いにいくか」

そう独り言を呟いて、響はマンションを出た。






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