たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「分かりました。あなたがそのおつもりならば、皇帝陛下にあなたをグレーテ妃に対する不敬罪立証済として絞首刑を具申いたします」


「ま、待ってくれ。それはあまりにも横暴ではないかっ」


二人の会話を黙って聞いていたエルンストがとうとう動いた。

ゆっくりと二人の座るソファーまでやってくると、組んだ腕をほどいて机に片手をついた。



「ベッヘムさん、あなたにそのつもりが無くても向こうにはあるんですよ」


閉じていた切れ長の目を開くと鋭い眼光でベッヘムを見据えた。


「私の言っている意味がわかりますね?」


「うぐっ」観念したように、ベッヘムはうなる。


「だからグレーテ妃はあなたが生きていると都合が悪いんです」


ベッヘムはグレーテとの関係を認めた。

しかし、お腹の子供の父親が自分とは夢にも思っていなかったらしい。


往々にして男とはそんなもんだ。

まいた種が実らないと思いたいらしい。

無自覚甚だしい。


冷徹そのものの顔でファーレンハイトはベッヘムに氷の視線を送る。

これはファーレンハイトの持論だが、『飛ぶ鳥あとを濁さず』だとか。

女性経験豊富なファーレンハイトだからこそ言えることだとも思えるが。

そんな彼からしたら、今回の件は最悪の結末と吐き捨てたいところだろう。

そのせいで玉座争いにまで発展し、皇妃ゾフィーに在らぬ疑いがかけられたのだから。
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