たとえこの身が焼かれてもお前を愛す

エルンストの朝は早い。

皇帝付騎士団は他の騎士団と違い、皇帝の警護がメインだった。いわゆる近衛兵であった。が、エルンストはその優秀さから、他の騎士団の指揮の全権を委ねられていた。


今日は週に一度の皇帝との謁見の日だった。
騎士団の近況報告などが主な内容だ。


エルンストは軍服に懸章と呼ばれる赤いたすきのような布を肩から腰にかけ、更にマントをはおる。靴は黒のブーツ。普段腰には剣をさしているが正装の時だけはサーベル。
手には白い手袋を持つ。
これがこの国の正装だった。


正装をしたエルンストは美の女神が嫉妬するほどの美しさだ。


「ご主人様っ!ヘレナから聞いたのですが!」

コンラートが青い顔をして着替えをしているエルンストの部屋に飛び込んできた。


「あの奴隷をご主人様付の侍女にされるとかっ!」


「ああ、それがどうした?」

涼しい顔で言いのける。


「とんでもございませんっ!奴隷の娘を侍女にされるなど前代未聞ですっ!」


朝から元気な年寄りだ。
エルンストは感心してしまう。
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