ダサ倉君に焦がれたい



「圭吾。この人たち、ダサ倉がSUだって信じられないみたい」



「……当然だろ」




圭吾さんは頭を抱えて言葉を吐く。




「ねぇ、そのギター貸して。

ここでみんなのためにライブしてあげる。

僕の歌を聴いて、まだ僕やつばさちゃんにキモいなんて言えるのかな」





そう言って……

圭吾さんのギターをひったくったすばるくんは、教室で歌った。

一番前の机に乗り、スピーカーが付いていない、音の小さなエレキギターを持って。

ギターの音はほとんど聞こえなかったが、その歌声は本物だった。

少しハスキーなその声は、時に力強く時に繊細で。

あたしの胸に容赦なく響き、突き動かす。

身体が熱くなり、涙が溢れた。





やっぱり、すばるくんは天才。

あたしが焦がれて仕方ない、SUなんだ。


< 283 / 322 >

この作品をシェア

pagetop