夜、を還す。
彼が車を止め音楽を消し、静かな時間が流れました。

「彼女ができた、好きじゃないけど」

ふと彼の口からそんな言葉が出ました。ついに来た。予想通りでした。


私たちは、最初から始まってもいないのです。私たちはプラトニックな関係でこの関係性を言葉で表すなら、単なる異性の友人。しかし、そこに厄介な感情が加わり、その感情に縛られ、身動きが取れず、前にも後ろにも進めなかったのです。すべてをタイミングのせいにして逃げてきたのです。


怒りが止まらかった。こんな結末すら想像できなかった自分に、こんな結末に従おうとする彼に、お互いの想いが通じあっていれば大丈夫と幼稚な考えを巡らせていた馬鹿な二人に。

「そっか。それなら、もう会わないほうがいいね」
「だな。」

私がフロントガラスを見つめ言うと、彼は嘲笑を浮かべ、ふっと鼻で笑いました。今まで聞いた彼の声の中で一番冷たい声でした。
この時、私はまた独りだと思いました。彼も独りなんだと思いました。








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