彼と私の優先順位
最後の告白
堪えきれずに零れ出した涙をとめることなく、走った。

数分前にはやる気持ちで通った道が、今は全く違う道に見える。



最悪な気分で、自宅に辿り着いた。

慧と溝口さんの姿が目に焼き付いて離れない。



慧が好きなのに。

ただそれだけなのに。



どうして……。

もう慧は私のことが嫌になってしまった?

何年経っても変われずに、立ち止まってばかりの私に愛想がつきた?

もっと早くに『好き』を伝えることができていれば、何か変わっていた?

私はもう遅すぎた?



言葉にならない悲しい気持ちがこみあげる一方で。

腹立たしさにも似た辛さが押し寄せる。



溝口さんには断ったって。

何とも思っていないって、そう言ったのに。



「……嘘つき!」

自分のことは棚にあげて、慧を責める言葉が思わず口をつく。




こんな自分も、こんな恋も、もう嫌だ。

こんなにドロドロした感情や後ろ向きな感情ばかりの自分は嫌だ。

胸が張り裂けそうに痛い。

もうどうしていいかわからない。



亜衣に背中を押してもらって、勇気を振り絞った筈だったのに。

最悪の結果になってしまった。

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