彼と私の優先順位
鞄から手帳を取り出して確認する。



淡いグレーの革表紙がお気に入りの文庫本サイズの手帳。

亜衣いわく、私のイメージではないらしいけれど。



「……ごめん、同期会がある」

記載されている予定を一目見るなり、憂鬱な気分になる。



「同期会?
じゃあ慧も?
あれ、でも慧、何にも言ってなかったよ?」

「入社時に、近くの店舗で仲良くなった同期との内輪の同期会なの」

「そういうこと……へぇ、結奈がそういうのに参加するの珍しいじゃない?
いつも断っているよね?」

亜衣の瞳が今日初めて、楽しそうな色に輝く。

「……前々から誘われていたんだけど……断りきれなくて……」

「慧は知ってるの?」

「……まだ言ってない、けど。
言った方がいい?」



当たり前よ、と亜衣は私に返事をする。

「まあ、慧のことだから、いい顔はしないだろうし、迎えに行くとか言いそうだけど。
慧は何だかんだで独占欲すごいから」



亜衣の言葉に目をパチクリする私に、亜衣がキョトン、とする。

「え?
何で?
慧ってそうでしょ?」

確認するかのように話す亜衣に。

「えっ?
え、……」

急にドキドキして返事にまごつく。



< 93 / 207 >

この作品をシェア

pagetop