彼と私の優先順位
「えっ?
まさか結奈、自覚なかったの?
本気で言ってる?
慧、昔からスッゴイ独占欲だったでしょ?
二人が付き合う前から」

「……?」



首を傾げる私に。

亜衣は大きな瞳を見開きながら、呆れたような表情を浮かべた。



「……慧も苦労するわね。
結奈、そんなに鈍かったのね……」

亜衣は大きな溜め息を吐く。

「そんなことないって!」

全否定する私に、人差し指を突きだしてピシャリと言い放つ、亜衣。

「あるわよ、いい?
そもそも慧が付き合ってもないのに、何で毎日結奈の近くにいたと思う?
他の男子の牽制でしょ?
事あるごとに手を繋いでいたのも、ワザとよ。
他の女子に告白された時も、結奈に片思いしてるって言ってたのよ。
そのくせ、結奈に矛先が向かないように、うまく相手に言い含めてね」



亜衣の言葉は寝耳に水で。

聞いているだけで、体温が上がってくる。

私は赤くなった顔を隠すように俯いて、アイスティーを飲む。

冷たい感触が喉を通って体温を下げてくれることを祈りながら。



「……もっとあるけど、聞く?
言っておくけど、慧は結奈より断然上手よ。
それだけ結奈を好きなんだろうけど。
多分、結奈が思う以上に慧は結奈を好きだと思うわよ」

赤くなった私の顔を見ながら、亜衣はニヤリと笑う。

「何で亜衣がそんなこと知ってるの……」

「見てたらわかるわよ。
慧が告白されてる場面に出くわしたことだってあるし。
部の後輩から、慧が好きだって相談されたこともあるし」

しれっと話す亜衣に返す言葉が見つからない。
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