イジワル副社長の溺愛にタジタジです
「すみません、彼女のパンプスが欲しいのですが」


彼は私が戸惑うのもお構いなしに店員に話しかける。


「本城さん、ちょっと……」


『高すぎて買えません』と言いたいのに、店員を目の前にしては言えない。


「承知しました。ヒールが折れてしまわれたんですね。いくつか持ってまいりますので、こちらに」


高級店のことだけはある。
促されて店内に入っていくと、革張りのフワフワなソファに案内されて座った。


「まずはサイズを測らせていただきますね」


サイズはいつも二十三センチ。
だから測らなくても……と思ったけれど、店員は長さだけでなく、横幅や足の指の形までチェックしている。


「エジプト型でいらっしゃいますね」

「エジプト?」


エジプトと足になんの関係があるの?


「はい。親指が一番長く小指に向かって短くなっていく足の形状をそう呼びます。エジプト型は、どんな形の靴でも比較的合うのですが、外反母趾になりやすいので注意が必要なんです」

「そうなんですね……」


そんなことちっとも知らなかった。
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