イジワル副社長の溺愛にタジタジです
どうしよう。
これから担当者に会うというのに、この姿では……。

それに、どうして七階? 
ドゥシャインとは関係のないフロアだから、私は来たことがない。


「あの、本城さん……」


エレベーターを降り、どこに行くのか尋ねようとふと顔を上げると、彼は私の腕を支えたまま歩きだした。


「片足はつま先歩きな。ここではさすがに抱えられない。パンツ見えるしな」

「見えてません!」


まるでさっき見えたような言い方をするから焦って反論すると、彼は「プッ」と吹き出した。


「すみれちゃんは真面目だな」

「その『すみれちゃん』はやめてくださいとお願いしているはずです」


彼は私のことをたまに『すみれちゃん』と呼ぶ。
それは大体、私をからかうときだ。


「怒るなよ、すみれちゃん」

「だから!」


そんな言い争いをしながら彼が向かったのは、とある有名な靴の売場だった。

デパートがひしめき合う界隈でも、この海外メーカーの靴を扱っているのはここしかないと聞いたことがある。
有名人たちがこぞって買い求めるというこのブランドは、私たち庶民には目が飛び出るくらい高い。
< 13 / 33 >

この作品をシェア

pagetop