あの日から、ずっと……
あの日
 
この町に戻って来たのは、十三年振りだ……


 茶色い革のスーツケースを片手にゴロゴロと引っ張りながら、高速バスの停留所からの坂道を歩いた。

 
 以前は田んぼが広がっていた場所に、大きなショッピングセンターが出来て、車の出入りの激しい交差点の信号待ちに少し不安を感じる。


 十三年も経ってしまったのだから、変わってしまったのは仕方がない……


 しかし、大通りから一本道を曲がると、懐かしい風景が目の前に広がった。

 新しい家が増えてはいるものの、昔と変わらない公園や小川が私の気持を浮き上がらせ、さっき抱いた不安はすっと消えてた。


 しばらく歩くと、一件の大きな家の前で足が止まる。



 私の頭の中で、十三年前の記憶が目の前に映し出された……
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