あの日から、ずっと……
 少しづつだが、任される仕事も出て来て、忙しく動く日々が増えてきた…… 

 新人の研修もあり、慌ただしい……


 「宇佐美さんちょっといいかな?」

 浅井先輩に会議室へと呼ばれた。

 中には、上原主任、資材部の城田課長と保科さん、井口さん、そして、泰知も居た。

 何事かと思うようなメンバーだ……


「忙しいところ済まないね…… 保科くんから話があるそうなんだ……」


 保科さんは、城田課長に促され前に出ると、私へ目を向けた。


「ごめんなさい……」


「えっ」

 私は驚いて声を上げてしまった。


「私、嘘を付いていました。この前のシアトルの工場の件、私が宇佐美さんに許可を出しました」


「もう、いいですよ…… 再度確認しなかった私が悪いんですから……」

 私はそう言ったのだが、保科さんは大きく首を横に振った。


「違うんです…… 立花さんに頼まれたんです…… 宇佐美さんが困るようにしろ、って言われて……」


「そんな……」


「立花さん、専務の娘だから、言う事聞かないとクビにするって…… 私、父が居なくて、母と弟と三人で…… 弟にお金が掛かるから、クビになる訳いかないんです…… 今以上のお給料もらえる所なんて無いんです…… でも、本当に申し訳ない事したと思って…… すみません……」

 保科さんは泣きながら頭を下げた。


「俺も、宇佐美が立花に脅されてるところ見た。私の吉川主任に近づくなって言われてたぞ」

 井口さんが口を開いた。


「ちょ、ちょっと、それは……」

 私は慌てて止めようとしたが、井口さんは知らん顔をして話を続けた。

「まあ、俺には好都合だったけど、立花の力かと思うと気持ち悪いしなぁ」


「しかし、立花にも困ったもんだな」

 上原先輩が腕を組んで言った。


「なんとしてよ!」

 浅井先輩が無茶な事を言いい、上原主任を睨んだ……


「あの…… 私のせいで、保科さんがクビになったら困ります……」

 私は泣きそうになりながら言うと。

 保科さんが驚いた顔で私を見ていた。


「大丈夫だ!」

 泰知が力強く頷いた。

「立花を呼んで来い」

 上原主任が言うと、浅井先輩がドアに向かった。


「いや、俺が行く」

 泰知が会議室から出て行った。


 城田課長がスマホを出し、会議室の端で誰かと話をしているようだ……
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