ヒトツバタゴ


気合いが漲る吉倉さんに笑顔を向けていると、隣から腕を掴まれ立たせられる



「何言ってんの?さつきも一緒に行くんだよ」



「え?応援はスタンドからでしょう?」



他の部署も応援側の社員はみんなスタンドから観戦している



「勝利の女神がコートの近くにいないでどうするの」




よくわからない理由を述べて私の腕を掴んだまま歩き出す橘に引き摺られるように歩く



「えっちょっと!コートの近くって!?ボール飛んできても避けられる自信ないんだけどっ」



私の運動音痴は橘もよく知ってるはずなのに…




「うちのメンバーみんな上手いから飛んでいかないって」



ははっと笑い飛ばしてスタンドの上の通路で集まっていた営業部1課の出場メンバーの輪に入り、アリーナへ下りていく



嘘でしょ…



本当に避けられないんだってば…



高校の時の体育の授業で顔面でレシーブをした苦い記憶が蘇る







コート横に設置されたベンチに控えメンバーの男性営業2人と並んで座らされる




私の心配を他所に営業部1課はどんどん点数を入れていく



先程のマーケティング企画部の早川さんに負けず劣らずの仕事をしている吉倉さんは先輩社員の中、楽しそうにボールを操っている




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