ヒトツバタゴ



大也は杏さんの旦那で、橘と同じく高校から腐れ縁の友人



だけど…



毎朝のギュウギュウ詰めの車内から私を隔離するのが橘ではなく大也だったら…



なんともしっくりとこない想像をするが、確実に突き飛ばすなり文句を口にする



「無理ですね」



大也が杏さんの旦那ということを除いても出てきた答えは『無理』



「そうよね、誰しもパーソナルスペースっていうのがあることは聞いたことある?」


杏さんの言葉に頷く


パーソナルスペースは他人に入られると不快に感じる距離


親しくなればその中に入られても不快にならなくなるが、その距離が0になる時を私はまだ知らない



「現時点でさつきちゃんのパーソナルスペースの1番内側まで入れるのが橘さんで、彼の匂いが好きと言い切れるのよね?」



纏められた言葉に再度頷く



「匂いが好きって思える人って世界に3人しかいないって言うのよ。家族ですら…例えば仲のいいお父さんと娘ですら、娘は『お父さん臭い』って思うの。」



確かに実家にいる父も5歳上の兄も臭い


でも中学の頃に母に言うと、母は父の匂いが好きだと言っていたし、兄の奥さんだって聞いたことはないけれど結婚して一緒に生活できる程には兄の匂いが好きなのだろう








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