【完】恋愛事情


「華依?」


「きゃっ」


自分の世界に入り込んでいたら、急に裕の顔がアップで映って、心臓が止まりそうになった。


一体いつから此処に来ていたのか…。


すっかり意識を混乱の中に投じ切ってしまっていて、裕が現れたことに全然気付けなかった。

小さな悲鳴を上げた後に、何も言わずにマジマジと顔を見つめるだけのあたしへと、裕は怪訝そうに話し掛けてきた。


「はな…?…なんや、さっきから、何べんも声掛けとんのに、どないしたん?」



「…え…あ。う、うん…なんでも、ない、よ?」



いつもだったら、ドキドキしてどうにかなってしまいそうなくらいの至近距離。

だけど、そんなキスが出来そうな程間近に迫っている裕の顔に、今はときめくはずもなく。



あたしは、急いで顔を逸らして、言葉を紡いだ。

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