【短編】生け贄と愛
森の中、木の根元に座りロゼはこれからどうやって帰ろうかと考えていた。
教会しか居場所がない。
逃げても、すぐに探されるだろう。
このまま死んでしまおうか、そんな思いもあったが、入水自殺できるような深い川も湖も無い。
飛び下りれるような崖もない。
それに自分のようなものが美しいものたちの中で死んでしまうと、彼等を汚してしまうような気がした。
だから、死ねない。
どうしようもなくなって、ロゼは立ち上がった。
森の奥深くへ歩く。
進んで、進んで、行けるところまで。
ロゼの姿が夕闇に消えていった。