【短編】生け贄と愛
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　深い森の中に立つ、洋館。

そこからは絶えず叫び声が聞こえるという噂があった。

化け物が住んでいると言われているのだから、ありがちな噂だった。


大きなシャンデリアが天井から下がる居間で、青年はぐったりとした女性をドサッと床に下ろした。


「化け物ねえ」


唇の端についた血を手で拭いながら、青年は呟いた。

見目麗しい青年。

黒髪にアメジストの瞳。

バランスの整った顔立ち。

優雅な気品溢れる彼の姿に人の血など、違和感さえ覚える。


「俺の名前何だっけな」


足元に転がる女に馬鹿にしたような眼差しを送りながら、分かりきったことをまた呟いた。


彼の名はシルヴェスタ。


食事と称して生き血を啜る、正真正銘のヴァンパイアだった。






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