明日、君を好きになる
彼のいない朝
11月に入り、季節は秋から冬へと、ゆっくり移り替わる。

カフェの店内も、つい先日終わったハロウィン仕様のインテリアから、少しずつ来月のクリスマスを意識した飾り付けに移行。

『渚さん、これどうしましょう?』

咲ちゃんが、ハロウィンの飾り用として置かれていたカボチャを手に、オーナーの元にやってきた。

飾り用…といっても、実際には本物のカボチャなのだから、もちろん調理は可能。

『そうねぇ、岡田君に言って、カボチャプリンにでもしてもらおうかな』
『あ、それ良いですね!』
『その量じゃ、お店に出すほど作れないんじゃない?』
『あらエリィ、自分たちで食べる用に決まってるじゃない』
『なるほどね』

こういうのも、職権乱用というのだろうか?

とはいえ、渚ちゃんに頼まれ、嬉しそうにプリンを作成する厨房の岡田君が目に見えるようで、それはそれで彼にとっては至福の時間になるのだろうと思うと、同情する必要はないのかもしれない。

『咲ちゃん、私、ランチの看板下げて来るね』
『あ、すみません、お願いしちゃって良いですか』
『オッケー、任せて』

最近天気のいい日は、ほとんど開放してる入り口を出ると、午後の柔らかな日差しがポカポカと心地いい。

ランチタイムも過ぎ、店頭に出してあった看板を下げて、代わりに午後のティータイム用の看板に差し替える

店頭の花たちも、オレンジを基調とした温かみのあるものから、少しずつ冬の草花へと移行。

今月末には、大好きなポインセチアを飾るんだと、伯母が気合いを入れているらしい。

看板を差し替え、しばらく気持ち良い日差しを浴びながら、歩道を歩く人の流れを眺め、無意識に黒い服の男性に目を走らせてしまう自分に、呆れて自嘲する。

馬鹿ね…もう彼は黒服など着ていないはずなのに。
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