明日、君を好きになる
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あの夜から、カフェに現れなくなった、小野崎さん。

最初の2~3日は、風邪でも引いたのかな?と心配し、1週間を過ぎるころには、何か事故にでもあったのかもしれないと、不安になった。

彼の連絡先も聞いていないままだったので、迷った末に渚ちゃんに相談するも、結局その時点で、彼女が知っていた連絡先もつながらなくなってしまっていた。

もしかしたら、また私に秘密にしていることがあるのかと疑ってしまったけれど、その時の渚ちゃんの慌てぶりから、彼女が嘘をついているようには思えなかった。

しかも、なぜか責任を感じている様子の渚ちゃんが、カフェに来る”恭介フリーク女子”に探りを入れたところ、やはりあの日の翌日には、バーも辞めてしまったらしく、誰も連絡の取りようも無くなってしまい、みんな口をそろえて【恭介ロス】を訴えていたらしい。

『何か…ごめん、エリィ』
『なんで渚ちゃんが謝るのよ』

彼女には、あの夜にあったことは何も言ってはいないけれど、もしかしたらこうなってしまったことで、私の知らないところでいろいろ動いてしまったことを、申し訳なく感じているのかもしれない。

そんな風に思うことなんて、無いのに。

第一、小野崎さんを好きになったことは、決して悔いてなどいなかった。

敢えて口には出せないけれど、私は渚ちゃんに感謝さえしてる。

『私だったら平気よ?…っていうか、別にまだ何にも始まっていないし』
『ね、エリィ、ちょっと待って?きっとなんか理由あると思うの。だって恭介君、本気でエリィのこと…』
『渚ちゃん』

彼女の言葉を遮るように名を呼んだ。

『もうこの話は無しにしょう』
『エリィ…』
『やだ、そんな顔しないでよ。私、そこまで本気で好きになってたわけじゃないし。それに今は、そんなことよりやらなきゃいけないことの方がたくさんあるんだから、むしろちょうど良かったのよ』

そういうと、私より泣きそうになってる渚ちゃんに、『男にうつつを抜かしてる時間ないって、言ったでしょ』と、カラカラ笑う。
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