私の二人の神様へ




 結局、佳苗さんと料理を作っている間、仁くんと榊田君は囲碁をしながら喧嘩をしていた。


 食事の間も二人で嫌味の言い合い。


 ある意味仲が良い。


 もちろん、私は食事の前も食事中も食事の後も仁くんにべったり甘えた。


 きっとこれからそう会えなくなるのがわかっていたから。


 それが当然だと思う。


 佳苗さんが寛大でも、仁くんと私がどれだけ仲が良くても、線を引かなくてはならない。


 私が駄々を捏ねるわけにはいかない。


 もう同じことは繰り返さない。


 彼の優しさに甘え、縋りつくのはやめなければ。


 大人にならなければ。
















 彼の家を出ると、ふっと力が抜けた。


 何故だか、泣きたくて仕方がなかった。


 嬉しいはずなのに、それだけでは済まされない感情に、涙腺が揺れた。


 それを必死に耐えていたから、疲れたに違いない。


 帰り道は無言だった。


 話す気力さえなかった。


 榊田君も仁くんとのバトルのせいで疲れていたからか、何も言わない。


 もしくは、彼の優しさかもしれない。


 彼の存在が私には救いだ。


 幸いだ。


 だから、彼には私のそばにいて欲しい。


 彼の気持ちに応えないくせに、そんな勝手なことを思っている。


 そんな私を見放さない彼は本当に優しい人。


 また明日、とアパートの前で別れ、入る間際にもう一度榊田君へ手を振った。


 家に帰り、熱のこもった部屋に入った瞬間、少し涙が出たのは、まだ榊田君の気持ちに応えることができない証。


 まだ仁くんへの恋が終わっていない証。








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