私の二人の神様へ
今日は佳苗さんのリクエストに応えて、ロールキャベツを作った。
佳苗さんはメモを取り一生懸命な姿を見ると、自然と微笑んでしまう。
昔の自分を見ているようで。
タマネギの炒め方から、挽肉の味付けまで十分に手間をかける。
それがおいしい料理の秘訣だと思う。
少なくても仁くんは、そんな私の料理が好きだ。
だから佳苗さんに託したい、彼が選んだ彼女に。
私が教えたものを、さらに佳苗さんが自分で少しずつ変えたものなら、より仁くんは喜んでくれるのではないだろうか。
本当は私の手料理を毎日仁くんに食べて欲しかったけど、彼が選んだのは佳苗さん。
佳苗さんは、どんな女性とも違う。
彼女より美人でスタイルが良くて、賢い女性なんていくらでもいる。
だけど、佳苗さんはそれ以上の魅力を持っている。
そんな佳苗さんが憎くて妬ましい。
「小春さん、こんな感じで良いですか?」
フライパンのタマネギを覗いて見ると、しっかり飴色になっている。
「完璧です。次に挽肉の味付けをしましょう」
憎くて妬ましいけど、私も仁くんと同じように彼女に惹かれている。
昔の私と同じようで、まったく違う彼女に。
彼女のお腹には仁くんの子供がいる。
複雑だけど、やっぱり嬉しさが勝っている。
だから、この子が佳苗さんのご飯をおいしい、と食べてくれるように。
佳苗さんに料理を教えることができて私は嬉しいのだ。
泣きたくなるほどに。
きっと目が潤むのはさっき切ったタマネギと嬉し涙でだ。