私の二人の神様へ
夜九時近く、彼が私のアパートまで迎えに来た。
本当に榊田君は私に甘いと思う。
夜道とは言っても、腕に覚えはあるし、私と彼のアパートは近いのだから。
彼は忙しくなってから、前日の夜かその日の朝に準備をしているらしく夕食はすぐに出された。
「明日もあるの?」
煮魚を口に入れると、蕩けるように消えていく。
骨も全然気にならない。
きっと昨晩から煮込んでいたのだろう。
手抜き料理ではない、このマメさ。
お婿さんに欲しいと思う女性が殺到しそうだ。
「土日にやらないで済むように平日に詰め込んでるから月曜までない」
彼は少し疲れ気味らしく、腕を一回転させた。
後で肩を揉んであげよう。
そう思っていたのに洗い物を済ませて部屋に戻ると、私が昼寝用に持ってきた、イルカのクッションを枕にして眠っていた。
やっぱり、お疲れなようだ。
何だか、私との夕食会が負担のような気がする。
家が近いとは言え、送り迎えは欠かさずしてくれるし、夕食の準備はある。
でも、私が榊田君といると心地良いように、彼も心地良さを感じてくれているはずだ。
だから、私から夕食会をやめようとは言わない。
私が忙しい時期だけでも作れば、こんなに負担にならないのに榊田君も頑固だ。
その頑固さに抵抗して、今日は一人で帰ろう。
明日怒るだろうけど、卵焼きを作れば機嫌が直るだろう。
ベッドから布団を取って彼にかけて、家を後にした。
イルカを枕にしている榊田君を写真に撮らなかったことを少し後悔しながらも、出し抜けた快感にスキップしながら帰った。