私の二人の神様へ
「あんたはそのバウムクーヘンを小春に食べさせたくて一人暮らしの女の家に行ったわけ?」
朔ちゃんの呆れ返る声に、まさか、と榊田君は手を横に振って、私を睨みつけた。
「こいつは自慢するだけ自慢して、俺への土産の一つもなかった。だから、今度は俺が食って自慢してやろうと思ってな」
何と子供っぽい考え方!
紗希さんに襲われていなかったら、私は榊田君の報復を喰らうところだった。
食べ物の恨みは恐ろしい。
「で、でも、私のお土産って言ったじゃない!」
「交換条件だ。これから一週間卵焼きを作れ。そしたら、食わせてやる」
なるほど、タダでくれるつもりはないわけか。
でも、グルグル屋のバウムクーヘンの前では悩むことさえ許されない。
即答だ。
「もちろん、喜んで作らせてもらうわ」
「俺の戦利品だ。心して食えよ」
交渉成立と、私たちは友好の握手を交わした。
「……榊田。あんた、男として間違ってる。絶対に間違ってる。他の男からしたら夢でも良いから見たい話よ?」
頭痛がするのか朔ちゃんは額を押さえ、項垂れた。
「どこが?悪夢だろ。まぁ。バウムクーヘンと卵焼きが食えるんだから、おいしい話ではあるがな」
気のない返答に朔ちゃんは脱力した。
全然、わかってない。
どれだけ、貴重でおいしい体験をしたかのかがまるでわかってない。
榊田君らしいと言えば榊田君らしいけど。