私の二人の神様へ
「朔ちゃん。榊田君は近年まれに見る紳士的な人だと思おうよ。精神衛生のために」
私は朔ちゃんを諭し、榊田君の戦利品の袋をいそいそ開けた。
実を言うと、さっきからグルグル屋のバウムクーヘンを拝みたくて仕方がなかったのだ。
開けると、二つ入っていた。
一つは袋が開けられ、三等分に切られかつ口がつけられていた。
「この食べかけは榊田君のよね?」
「そうだ。あいつは、俺に仕事を押し付けて風呂に入る詫びとして、バウムクーヘンを出したからそれを食べた」
襲われかけて、食べかけのバウムクーヘンを袋に戻して持って帰って来たわけか。
さすがは食い意地が張っている。
でも、
「二つ目のバウムクーヘンは?これも紗希さんが出したの?」
一つで三人分のバウムクーヘン。
二つもテーブルに出したのだろうか?
「小宮山に、これしかないのかと聞いたら、冷蔵庫を指差したから俺が取り出した。あいつは動けないようだったから」
「…………」
「…………」
どう考えても榊田君に被害者は似合わない。
逃げ出して来た?
食べかけのバウムクーヘンだけでなく、冷蔵庫のバウムクーヘンまで持って帰って来て、良くも抜けぬけと。
しかし、これ以上この件に触れるのは私と朔ちゃんの精神衛生上よろしくない。