私の二人の神様へ




「これだけあるなら来週、小夜ちゃんの家で五人で食べよう」



「はぁ!?俺の戦利品をお前が何で勝手に決めてんだよ」



「これ六人分よ?みんなで楽しみは分かち合わなくちゃ!」



「水野。一人でバウムクーヘンを食べた、お前がそれを言うか?」



 私は言葉を一瞬詰まらせたが、慌てて笑みを作る。



「きょ、今日の夕食は卵焼きに、くるみとひじきの混ぜご飯と豚汁でどう?」



 どれも榊田君の大好物。


 というより、このメニューは私も仁くんも佳苗さんも大好物だ。


 榊田君がゼミで忙しかった時に、私だけでお邪魔してこのメニューを作った。


 大量に作ったはずなのに、榊田君へのお土産は普通の一人前になってしまうぐらい、三人ともたくさん食べた。


 佳苗さんのお腹は目立つぐらいになっていて。


 小柄だから、何だか一層大変そうに見えて、代わってあげたくなるぐらいだった。


 もちろん、他意はない。


 そう、他意なんて。


 と、とにかく!


 榊田君は、あっさり頷いてくれた。


 目には目を、食べ物には食べ物を。


 こうして、分かち合いの精神の下、榊田君の食べかけだけは三等分して仲良く食べた。


 朔ちゃんの機嫌もおいしいものを食べて、すっかり直ったし、食べ物の力は偉大だ。


 あ~やっぱり、グルグル屋のバウムクーヘンはおいしい。










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