私の二人の神様へ



 仁くんは、まだ容赦なく続けた。



「加え、あいつは周りを取り込む力がある。本人にどこまで自覚があるかわからないがな。小春も言ってただろ?傍若無人でも常にあいつの周りには人が寄ってくるって」



「それは、普段は優しいから!」



「優しい?小春もお人よしだな」



「仁くんが知らないだけ。榊田君は優しい人よ」



 私が強固に主張してみせると、仁くんはため息を吐いた。


 きっと平行線で相容れることはないとわかって一歩譲ったのだ。



「優しい人間だったとしよう。そうだとして、あいつの人を惹きつける力が優しさだと思ってるのか?」



「…………………」



 それは違うと思う。


 優しい人ならいくらでもいる。


 仁くんの言うとおり、彼の才能なのだと思う。


 榊田君は無条件に周りを惹きつけ、放さない。



「どうせ、周りも小春と榊田を囃し立てて、榊田の片思いを知ってるやつは、くっつけようと口出ししてくる。違うか?」



「……その通りです」



 朔ちゃんや広君だけじゃなくて、最近だと、榊田君の学部の友達の安住君と黒澤君まで、俊と付き合ってあげてと泣きながら頼み込んできた。


 その後、榊田君にシメられて、本当に泣いていたのは余談だ。


 みんな、榊田君をからかうのを面白がって、応援している節があるけれど。



「他の男と付き合う選択だって、誰とも付き合わない選択だって小春にはあるのに、それをわざと見えなくしてる。あいつは優しくなんかないぞ。勘違いするな」



「それは違う!榊田君は優しいもん!」



 いつも、私のことを助けてくれた。


 彼は私の拾う神だ。



「優しくしてるだけだ。小春に好かれたいから」



「それ違いがあるの?付き合ったら優しくなくなるとか?」



「付き合ったら、より優しくなるだろうな。でも、俺の言葉に惑わされるくらいなら付き合うな。後悔することになる」



 後悔?



「付き合ってから好きじゃない、って気付いても遅い。あいつは小春の気持ちなんて黙殺するぞ」



 彼の今までの言葉が頭の中でくるくると回っていた。


 余計わからなくなる。



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